そのとき僕は買物の途中だったのだが、残念ながら僕が欲しかったモノは電化製品ではなかった。僕はフリースとタイツを探していたのだ。
僕は蘭州から格爾木への夜行列車の中で、寒さのせいで眠れないという状態だった。そのときは17時間程度のことだったし、格爾木の標高は高いといっても2800mなので、まだ耐えられた。だけど今回は恐らくもっとキツイ状況になることは容易に想像できた。なにせ陸路でチベットへ行こうというのだから。
そういうわけで僕は防寒着を求めて街に出てきた。僕は暖かい時期に日本を出てきたので、トレーナーのような厚手の服を僕は一切持っていなかった。長袖のシャツは1枚持っていたけれど、それでしのげるほどチベットの寒さは甘くないだろう。
フリースは問題なく見つかった。大通りにあるカジュアルショップやスポーツ用品店で売られていたから。問題だったのは、その価格だった。僕はそんなに立派なフリースを求めているわけではなく、日本のユニクロで1980円くらいで売られているような程度のモノで十分だった。だけど、その程度のフリースに付いている値札を見ると、なんとどれも150〜200元と書かれてあるのだ。元値がこれだけ高いと、ディスカウントしてもらっても100元以下にはならないだろう。この価格なら日本と同じか、ヘタをすれば日本よりも高い。「中国の物価は何でも日本よりも安い」というのが、自分の勝手な思い込みだったという事に僕は初めて気が付いた。恐らくフリースのように新しい商品は中国では多く出回っていないから(特に格爾木のような田舎では)まだ価格が下がらないのだろう。僕はフリースをあきらめて目標をセーターに変更した。
そして僕はセーターを買うために市場に行った。市場ではフリースのような新しい商品は売っていなかったが、セーターは多くの種類が売られていた。古着同然のモノは20元くらいから高級なモノは100元くらいまで、いろんな価格帯で販売されており、買い手がいろいろと選ぶことが可能だ。安いモノはデザインもパッとしないけれど、ある程度出せば日本で着ても恥ずかしくないモノが買える。僕は85元で売られていたグレーのセーターを70元に値切って購入した。
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