僕が宿泊していたゲストハウスはポカラの「ダムサイド」にある。同じペワ湖畔でも「レイクサイド」と違い、静かでのんびりした雰囲気がこの地域のウリだ。ゲストハウスの目の前にあるペワ湖の湖岸に出て、地元の子供達がカニを捕ったり、オジサンが釣り糸をたらしている光景を見ていると、とても落ち着いた気分になれたし、ゲストハウスの屋上から美しいサランコットの山々や、アンナプルナ連峰を眺めているだけでも自然を楽しむことができた。
ポカラの街に滞在するツーリストの中には、そういった自然に直接触れるのを目的としたトレッキング・ツアーに参加する者も多かった。実際に僕も数日前にポカラのバスターミナルに到着した時には、ゲストハウスの客引き達から「ウチはトレッキング・ツアーの斡旋もやっているから。」なんて誘われたりもした。10月下旬のネパールはトレッキングのベスト・シーズンだから、客引き達がそんなふうに僕に声をかけるのも当然理解できることだった。
けれども僕がそういったツアーを申し込むことは、とうとう無かった。理由はその費用が惜しかったというよりは、「山を見るのはいいけど、登るのはもうたくさんだ。」という気持ちが強かったからだ。僕の中にはチベットでエヴェレスト・ベースキャンプに行ったときのキツイ体験が、まだ強く残っていた。ポカラのツアーではヒッチハイクや重度の高山病を心配する必要はなさそうだったが、ハッキリ言って「トレッキングに関してはお腹いっぱい」だったのだ。
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