「リー、国を出てくる前には何をしていたの?」
そう尋ねると、
「軍隊にいたんだよ。といっても、職業軍人ってわけじないんだ。知っていると思うけど、韓国には徴兵制度があって、男には兵役に就く義務があるんだ。」
そしてリーは更に続ける。
「実弾を使った射撃訓練とか、途方も無い距離のランニングとか、とにかく大変だったよ。2年以上もよく耐えたと思うね。給料なんて月々数千円程度だし、まったく時間のムダとはああいうことを言うんだね。ところでKOGは日本では何をしてたんだい?」
リーは尋ね返した。
「会社で働いていたけど、2ヶ月前に辞めたんだ。」
「どうして?」
「長い旅をしたかったからだよ。」
「どこまで行くの?」
「可能ならチベット・ネパール・インドと抜けようと思ってる。その先はわからない。」
僕がそう答えると、リーは納得したように頷いた。
僕達を乗せたワゴンはゴルムドを出発した後、崑崙山脈のふもとを目指して青蔵公路を南進する。ゴルムドからラサまでの所要時間について、正確に予測するのは難しい。スムーズに24時間程度で到着したという幸運なハナシもあれば、ドライバーが道を知らなくて60時間かかったという笑えないハナシもあるようで、僕達にわかっていたのは「いつ到着するのかわからない」ということだけだ。
「ナカタ、オノ・・・」「黄善洪、柳想鐵・・・」
その後も僕達日本人5人とリーはサッカーのハナシをしながら車内での時間を過ごした。それ以外に長時間にわたる車内での退屈さに勝つ方法はなさそうだった。
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